連絡船 ── 航行記(第一期・第二期)



(二〇)疑念

 ここしばらくで、ようやくこの一年あまり ── 実は、そんなふうに自分で考えているよりもっと長い年数になるかもしれませんが ── に自分のいた・押し込められていた・引きこもっていた場所から脱することができたかもしれないという気がしはじめています。やっとまともな呼吸のできる場所に出られたとでもいうように。鈍感のせいで、つい最近まで自分がどんな空気を呼吸していたかに気がつかなかった、というような具合に。
 そうすると、私はまた最初からこの企て ──「連絡船」── をやり直さなくてはならないのじゃないか、という疑念も生じます。
 つまり、当初の私の見込みが甘すぎたということですね。その見込みなしにいまの疑いもありえないんですけれど。
(二〇〇七年六月)

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